【動画制作】動画制作のナレーション用マイクを試行錯誤したら大変なことになった話
こんにちは、がくんちのガクです。
趣味で家族行事などの動画を制作してYouTubeに公開しています。動画に入れるナレーションが下手くそなのは仕方がないけれど、録音した音質を少しでも好みのものに近づけたいという欲求を満たすため、複数のマイクやその周辺機器について試行錯誤した足跡を、ここに記録しておこうと思います。
結果的にこんな大掛かりなことに
ニッチな内容ですが、以下のような方には特に参考になるはずです。
- 動画用ナレーションの録音には、どんなマイクがいいんだろうと悩まれている初心者の方
- ナレーションを挿入した際に、ヘッドフォンやステレオスピーカーの片方しか音声が再生されないという問題に直面された方
- アンドロイド端末で動画制作されている方
PCでの解決は簡単ですが、特にアンドロイド端末の動画編集アプリから直接録音される方には参考になるはずです。(そんな方がどのくらいいらっしゃるかは不明ですけど)
ちなみにコンデンサーマイクとかダイナミックマイクという言葉については、ググっていただければいくらでも記事が出てくると思うので、この記事では説明を割愛します。
試行錯誤(前半) ー 機材のグレードアップ
FIFINE (K683A) USBコンデンサーマイク
動画制作を始めてからしばらくの間、ナレーションを録音したのはアマゾンで見つけた7,000円程度のUSBコンデンサーマイクでした。少し録音する程度だと気にならなかったのですが、フルナレーションの動画を作ってみて思ったのは、(動画編集アプリとの相性かもしれませんが)音量と感度とのバランスが悪く、一生懸命喋っているような苦しいナレーションになっているなということでした。ちなみにUSBコンデンサーマイクとは、USBから電源供給するタイプのコンデンサーマイクで、オーディオインターフェイスという電源供給のための中継器が不要なタイプです。
FIFINEのUSBコンデンサーマイク【広告リンクあり】
JOBYウェイボPOD USBコンデンサーマイク
次に考えたのは、マイク自体にゲインコントロール(感度調整)が付いたものなら先ほどの問題が解決するのではないかということでした。そこでJOBYのウェイボPODという15,000円弱程度のUSBコンデンサーマイクを試すことにしました。前評判は悪くなさそうです。実際に使ってみて、確かにボリュームと感度の関係はましになったのですが、音声がデジタルというかドライで低音域の深みが無いサウンドで、これはこれで使えるのですが、声に重みが無いことが悩みの私は、自分ではなく「機材にできること」をもっと追及してみたくなりました。
ゲインコントロールが付いたJOBYのUSBコンデンサーマイク
Donnerオーディオインターフェイス
次に考えたのは簡易的なイコライザー機能を持ったオーディオ・インターフェイス(マイクとタブレットを中継する機材)を導入することでした。早速、12,000円程で販売(アマゾン)されていたDonner社のオーディオインターフェイス(マイクセット)を購入してみました。感想は、先ほどのJOBYのUSBコンデンサーマイクに少し音質調整が付いたくらいという感じでした。問題は、イコライザーでエフェクトをかけた音が、モニター用のヘッドフォンで聞いている音と実際に録音された音とで異なったため、とても録音のしにくい状況になったということです。あまり調整しなければ問題ないのですが、それでは本末転倒ですし、そもそも求めていた音質とは異なりました。本機はナレーション録音というよりは、ポッドキャスト向きの便利機材として向いていそうですね。それでもリバーブ機能(エコーのような響く声)は面白いので、何かには使えそうです。脇に置いてたまに使ってみようと思いました。
リバーブ機能だけは今後も利用したいDonnerのオーディオインターフェイス
Audio-Technica AT2020コンデンサ―マイク および FOCUSRITE Scarlett 2i2 3rd Gen
ここでとうとうリアルなコンデンサーマイク(InとOutの両方がキャノン端子になっていて、48ボルトの電源供給が必要なマイク)を考えました。もう完全にマイク沼にはまっています。世の中で一番売れているという廉価なAT2020の中古(新品同様1万円)を買うことにしたのですが、そのためには電源供給可能なオーディオインターフェイスが必要です。値ごろ感と性能を一生懸命リサーチして、FOCUSRITE Scarlett (2イン2アウト)の3rd ジェネレーションを丁度2万円程で購入しました。ここでソロタイプではなく、偶然でしたが2イン2アウトを選んでおいて幸運でした(理由は後ほど)。
AT2020 コンデンサ―マイクとFOCUSRITE Scarlett 2i2 3rd Genオーディオインターフェイス
ちなみにオーディオインターフェイスをアンドロイドに繋ぐのは、相応の覚悟が必要です。音響機器というのは、iPhoneやiPadのOSとの相性は良いのですが、アンドロイドOSだと各社で仕様がバラバラなため、機能しないことが割とあるとのこと。最近のアンドロイドOSはようやく仕様がそろってきているらしいので、Windowsに対応する機材であれば動くことがある程度予想できますが確約はできません。誰かがアンドロイドにつなげているという既成事実がある実機を必死にリサーチし、少しでも可能性を高めるという努力をしました(ちなみにアンドロイドOSのバージョンでも結果が異なります)。
購入した機材が届き、早速タブレットに繋いで録音してみます。モニターから聞こえる音は素晴らしい質感でテンションが上がりました。ところが、録音した音声を聞いて愕然。ヘッドフォンの片方しか音が聞こえないのです。
試行錯誤(後半)- 音が片方しか出ない ステレオ vs モノラル
ここからは機材のグレードアップではなく、問題解決に対する出費と試行錯誤の記録です。素人の私でしたが、片方しか音が出ない理由をあれこれ調べて以下のように理解しました。
まず音が片方しか出ない原因は、マイクを通した音声データはモノラル音源として信号が流れますが、受け取ったソフトやアプリがステレオ音源を受信するという設定になっていると、片方の信号が足りないステレオ音源が録音されます。そうするとステレオ再生しようとした際に、片方の音が無いという再生になります。
1本のコードに流れるモノラル信号がタブレットでステレオ信号として受け取られている
これを改善しようと思うといくつかの方法があります。
- アプリやソフトの設定をモノラル録音にする
- マイク2台で物理的なステレオとして録音する
- モノラル信号を2本に振り分けてアプリやソフトにステレオ信号だと勘違いさせる
- モノラル設定可能な音声録音専用のアプリを探して別取りしたものを編集で乗せる
1のアプリの設定をどうにかするのは、私の使っているアプリではどうにもならないことが判明しました。PCの音声録音ソフトや高機能の動画編集ソフトを利用されている方は、ソフトの設定をステレオ録音からモノラル録音に変えれば済む話ですが、アンドロイド端末のアプリだと、その設定すらできないことがあるということです。
2のマイク2台も考えましたが、セッティングが大掛かりなうえ、音声のタイミングがずれたりしないのだろうかと、色々と考えてしまったので試さないことにします。同じマイク2台揃えるのも微妙ですしね。
3はオーディオインターフェイスが2インだからこそできることで(ソロだとできません)、これは試してみようと思いました。思い浮かぶのはモノラル信号を2本に振り分けて同じ信号を流す分岐器の導入です。しかし分岐器は電源供給の流れを止めてしまうため、電源供給の必要ないダイナミックマイクでしか実現できません。完全にマイク沼にはまっていた私は、新たにダイナミックマイクまで購入するに至ります。
4は編集が面倒過ぎてやめておきました。でも別の理由から、別取り用のレコーダーは購入しました。そのレコーダーですべての音を取るのは、さすがに撮影とデータを扱う負荷が高いのでやめておきます。
Audio-Technica AT2040ダイナミックマイク および モノラル分岐コード
本マイクはポッドキャスト用として定評のあるダイナミックマイクで12,000円程の商品です。先ほど紹介したDonnerのオーディオインターフェイスの付属マイクの代わりにAT2040をつないでみたところ、それだけで音質の改善が見られました。そして本命の分岐器(今回は分岐コードを利用)をオーディオインターフェイスの2inの両方の入力端子につなぐことを試します。
AT2040 ダイナミックマイク
結論から言うと、片方だけ録音できている時よりも音量が低下しました。ただヘッドフォンの両方から音は出ているので、一歩前進ではあります。電気機器音痴の私では理由は定かではないのですが、信号が弱くなっているような印象でした。でも信号自体は弱くはならないはずなので、やはり電圧(電流?)の問題なのでしょうか。困りました。
ART SplitCom Pro マイクスプリッター・コンバイナー
何か方法はないものかと考えていたら、偶然にもサウンドハウスさんから、マイクスプリッターという機器が販売されているのを発見しました。しかも6,000円程度(2023年3月現在)です。
マイクスプリッター
この機材は、コンデンサーマイクへのファンタム電源の供給を確保したまま、モノラルの信号を2本のアウトプットに振り分けるものだということでした。通常は、1本目はメインのアウトプットに流して、2本目の分岐はモニター用のスピーカーを鳴らすのに使うなど、ボーカルがステージで使うのによさそうな機材です。
先ほどダイナミックマイクからの分岐を試していた私には、「これでコンデンサーマイクをつなげば音質は改善するはず」という謎の自信がありました。唯一の懸念は、ファンタム電源供給が悪さをして機材を破壊しないかということですが、マイク沼にどっぷり浸かっているオジサンは「当たって砕けろ」のマインドしかありません。
擬似ステレオ信号化の結果検証
そして商品が届き追加のキャノン端子ケーブルも用意し、運命の開通式!
やりました! AT2020の細やかな音をそのままタブレットに流してくれる上、ちゃんとヘッドフォンの両方の耳から音が聞こえます。しかもパワーダウンはなく、ゲインも絞り気味で使えます。最初のマイクからは大幅な音質の改善です。
大幅な改善があった分、自身のナレーション技術の弱点も沢山浮き彫りになってはしまいましたが、当初目的だったところまではたどり着きました。
ただこの時点で録音時に聞く音と、録音後に別のヘッドホンで聞く音との差に不満が出てきました。これはゲーミング用のヘッドフォンを使っていたせいだと推測しました。
マイクに電源供給しながら信号を2本に分岐して擬似ステレオ信号化
SENNHEISER ( ゼンハイザー ) HD25 モニターヘッドフォン
そんなわけでモニターヘッドフォンを導入しました。
それまで安価なゲーミングヘッドフォンに比べ、不満だった録音時の音が一気に改善しました。本当に細かいノイズまでよく聞こえるので、モニターヘッドフォン最高です。
ソニーのCD900STというのが、スタジオ録音の定番とされていて、価格はゼンハイザーのHD25よりは気持ちお安い16,000円程なのですが、散々迷ったあげくHD25にしました。このHD25はDJの世界では定番のようです。
お店でそれぞれの装着感を比べてみたときの一番の違いは重さで、ソニーは「なんか重いな」と思い、ゼンハイザーは「軽くて貧弱そう」でした。
最終的に軽いほう楽だと思ったのと、ソニーSD900STを手に取ってまじまじと見た時に「なんか古い」と直感的に思ってしまいました。見た目については完全に感性の問題なので、参考にならないかもしれませんが、結局こういうのって自己満足が重要です。流通量的にはソニーのほうがアフターケアも万全そうですけどね。
最後に
振り返るとマイクとオーディオインターフェイス、モニターヘッドフォン、追加のケーブルやマイクスタンド、などの周辺機材を含め、約10万円という浪費の旅を進んでしまいました。
「もはや動画編集用のPC買って高性能な無料編集ソフト入れたら?」というところの一歩手前まで来てる気がしますが、そうすると場所を問わず隙間時間にさっと編集するような私の動画制作スタイルにマッチしなくなるのです。
最初からiPad proでやってたら解決してたのかな?とは頭の片隅で思うものの、頑なにアンドロイドユーザーを貫く中年オジサンでした。それはそれで楽しいんですよね。
次はどんな泥沼にはまるのか・・・
ガク
★がくんち – Gaku’s Base★
お気軽にコメントください