ホワイトホース(カナダ)現地ガイドからの詳細情報
こんにちは、がくんちのガクです。
前回記事からスタートした「特集・ユーコン川カヌー」では、山岳やアウトドアはわりと得意だがカヌーは素人という男女4人が手探りで計画を立て、国内のカヌートレーニングを経てカナダのホワイトホースへ向かい、そして願わくば無事に帰ってくるという一連の流れを記録していく(カナダ渡航は2024年6月のため随時執筆していく予定)。この特集が、今後ユーコン川を目指すという人たちの参考になってくれれば嬉しい限りである。
さて、前回の記事「その① 計画編 ~ カナダ・ユーコン川遠征を決定」で要点だけ触れた現地ガイドの櫛田さん(Klondike Canoeing Rentalsのオーナー)からのアドバイスだったが、今回の記事ではそれを補足する形で詳細にまで言及したい。実際にユーコン川を目指そうとする人達にとって耳寄りな情報も添えておく。(前回の記事👇)
ユーコン川下り遠征の4人👇(詳細プロフィールは前回記事へ👆)
スケジュールの詳細
下の旅程表は櫛田さんと会話したうえで最終化されたもの。前回記事では表を掲載するに留まったが、今回は文章でも解説する。
まずはフライトだが、羽田からの直行便の場合バンクーバーが目的地となり、その後カナダの国内便に乗り継いでホワイトホースへ向かう。余談になるが、カナダへの往路は時差を埋める方向のため、カレンダー上は同じ日に到着することになり、なんとなく得した気分だが、逆に東京への復路は時差が開く方向へ向かうため、カレンダー上の1日を失う。気流の影響で帰りのフライトは行きよりも1時間半ほど長い約10時間半になり、時差分と飛行時間を合わせた約26時間が魔法のごとく消滅する。実際は行きとほぼ相殺するだけだが、人間は何かを得るよりも失うことに対して敏感なようで、大いに損をした気分になってしまう。
話を旅程表に戻すと、4人のメンバーのうち「やまとさん」が2週間ほど前倒してカナダ入りするため、他の3人が到着する頃にはある程度の買い出しや情報収集が済んでいることが見込める。そのため旅程表には買い出しの時間が極めて短く置かれている。そして今回カヌーで出発するのはユーコン川ではなく初心者向けのテスリン川なので、Johnson’s Crossingという場所まで送迎車で送ってもらい、その日の午後には流れの穏やかなテスリン川へとカヌーを漕ぎだす予定になっている。流れの速いユーコン川へ合流するのは出発から約200km下流なので、計画通りに進んだ場合は旅程6日目(川下りのDay5)の午前中に合流となり、カヌー生活にも慣れた頃だろう。ちなみにユーコン川合流からゴール地点のCarmacksまでは約170km。全部で370kmで8日間だと、毎日5~6時間は漕ぐイメージらしい。
旅程表の10日目には予備日を置いているが、基本的にはピックアップ予定の前日にはゴール地点であるCarmaksに着き、キャンプをしながら送迎車を待つ算段をしている。370kmを8日間で行くというのが妥当かどうかは、個人の体力やどんなスタイルで行きたいかにも依存するため一概には言えないが、多くのガイドツアーでは8日間が基本となっているようなので問題ないと想像する。実際にもっと短期間の記録も見かけるので、いざとなれば明るい白夜の中を死ぬ気で漕げばなんとかなるさと思っている。ユーコン川は流れに乗るだけでも一日30km進むらしいので、ユーコン川合流後に距離を稼ぐというのも可能なのかもしれない。
現地ガイドと会話して考えたこと
2024年1月1日に発生した石川県の地震に対する災害ボランティアのために、遠路はるばる日本へ帰国された現地ガイドの櫛田さん。彼からの着信履歴に気が付いて折り返すと、日本でレンタルした携帯電話の通話料が一定だということで、わざわざかけ直してくれた。1時間ほど会話したのだが、おかげでメールのやり取り程度では入手できなかったであろう細やかな情報が得られた。事前に想定の旅程表と質問をメールで送っていたおかげで、会話がスムーズに進んだとも思う。ここでは実際に会話した流れに沿って情報をまとめていきたい。
カナディアンカヌー
当たり前だが、カヌーとカヤックには違いがある。シェークスピアがユーコンの劇を作ったら、きっと「カヌーなのか、カヤックなのか、それが問題だ」と苦悶するハムレットがいた(かもしれない)ほど、どちらを選ぶべきか悩ましい問題である。去年の夏に薬師沢小屋でも話し合ったが、カヌーのほうが荷物が多く詰めることと、転覆しにくそうという勝手なイメージで、なんとなくカナディアンカヌー前提のようになっていた。ところが櫛田さんとの会話で、カヌーに対する認識を一部改めることになる。
積載量に対する我々の認識は正しかったようで、まずカヤックの場合だと登山の縦走に似た感覚となり「荷物を削って8日間縦走すると思えば分かると思うが…」という言い方をされていた。一人乗りで約100リットルのザックにプラスアルファくらいが積める感じだろうか。せいぜい40~50kgが限界だと解釈した。一方、2人乗りのカヌーの場合、人間の体重にプラスして200キロくらい載せられるとのことだった。この積載量は魅力的で、運ぶ食料と嗜好品の量に圧倒的な差がある。
転覆に関しては、カヤックは素人でもどうにかコントロールでき、比較的安全なうえ進むスピードも速いらしいが、カナディアンカヌーは少し練習したくらいでは駄目で、転覆のリスクも高いということだった。櫛田さんの話では、日本で一般的なカヌー体験を経験して「カヌーは練習してきた」と言う日本人客は多いが、ほとんどはお話にならないレベルとのこと。その場合どうされているかまでは聞かなかったが、断ることもできないだろうから現地のカヌー研修のお勧めでもするのだろうか…
カヌーに対する認識を改めた私はカヤックを借りる場合についても質問してみたのだが、櫛田さんのお店では2人乗りカヌーなら4人分問題ないが、2人乗りカヤックは用意がなく、1人乗りカヤックも3艘しかないということだった。それだと4人は無理だ。「他の店で借りてもらって、送迎だけでも受けますよ」と言っていただけたが、それはそれで他店とのやりとりが面倒そうだ。
「結局のところどんなライフスタイルを楽しみたいかに尽きる」と聞いて、年とともに煩悩が肥大した私の脳裏には「そんなの一択でしょ!」とカヌー上でにこやかに叫ぶ仲間の姿がちらついた。問題は「技術不足をどう補うか」だが、「1日半くらいみっちりやれば大丈夫でしょう」と話す櫛田さんから、長野県の信頼できるトレーナーを紹介頂くことになった。
UCDi ウクディパドリングスクール
紹介いただいたのは、長野県の野尻湖に拠点を構えるウクディパドリングスクールの代表である石川義治氏。ウェブサイトで経歴を拝見したが、カヌーに関して信頼できるのは間違いなさそうである。それに野尻湖なら東京に住む3人と富山に住む1人のちょうど中間の距離なので、なかなか良い場所にも思えた。
ウェブサイトにあったメールアドレスに、櫛田さんから紹介頂いたことやユーコン川へ向かう予定があることなどを記してメールを送ってみたところ、「櫛田さんから一報聞いております。お勧めの講習内容は、野尻湖静水講習1日+
【広告】UCDi ウクディパドリングスクールは「そとあそび」にも掲載あり
6月のユーコン川
大自然に身を委ねるうえでは時期的な特徴も把握しておきたい。情報を探したが、我々の行く6月上旬というのはカヌーがシーズンインしたばかりというタイミングで、それが何を意味するかまでは分からなかった。ネット上の日本語の記録は、だいたい夏休み頃のものが多いため適当な情報が見当たらない。英語でも探したが、国民性の違いなのか求めているような情報の粒度で書かれたものは見つけられなかった。そういう状況なので、櫛田さんと会話できたのは本当にありがたい。
櫛田さんによると、もし6月初旬にユーコン川からホワイトホースを出発する場合は、その下流にあるラバージ湖(Lake Laberge)という湖に氷が残っていて進めない場合があるが、テスリン川だったら凍らないとのことだった。まずはスタートすることはできるということに安心した。ちなみにテスリン川がユーコン川に比べて初心者向きとされる理由は、このラバージ湖が危険というのが主な理由らしい。複数人のブログ記事から、ラバージ湖には流れが無いので漕ぐのが大変なうえ位置を見失いやすく、風と波による転覆のリスクもあるということが読み取れた。
6月の天候は安定しているらしく、櫛田さんは「むちゃくちゃ安定してる」という言い方をされていた。それはありがたい。日本人が好む8月は(好むというより夏休みやお盆といったお国事情な気はするが)わりと不安定で、北風が強くてかなり寒い日もあるらしい。ホワイトホースの気温を調べてみたが、6月~8月の平均気温は1年で最も高いが、6月初旬はやや気温の低い5月に近いのかもしれない。寝具等の装備については、夏でも冬用の寝袋が良いという記事を見かけたので、6月初旬は冬用の寝袋が必須だろうと想像できる。幸いにも我々全員が山岳用の厳冬期向き寝袋を持っていることに安堵した。
心配な点もいくつかある。ひとつは夏の蚊の多さである。「水曜どうでしょう」のユーコン編でも大泉洋氏の尻が犠牲になったシーンや、ミスターこと鈴井貴之氏の腫れあがった顔が印象的だった。この記事を書きながら調べてみたのだが、どうやらユーコンの蚊のピークは6月のようで、「困ったなぁ」とつぶやきながらこの文章を書いているところだ。メンバー全員が、バイキンマンの策にはまってフルボッコにされたアンパンマンの顔になるかもしれないのだが、それはそれで面白い撮影ができるだろうと前向きに捉えよう。
ふたつ目は人の少なさに関するもの。6月頃はほとんど人がいないらしく、何かあった場合はすぐに助けは来ない。その代わりキャンプ場は空いているので、テント張りには困らない。キャンプ場で自由がきくのはありがたいが、何かあった場合を考えると怖い。櫛田さんは6月中旬にユーコン川を下ったこともあるそうだが、その時は2組しか見かけなかったとか。
人が少ないのが怖い理由には熊もある。ユーコンに多数生息する熊(グリズリーとブラックベアー)は4~5月に巣を離れ5~6月には餌を求めて活性化するようで、人の少ない状況は狙いが定まりやすいのではないかと危惧してしまう。なにせ連中は数キロ先の風上の匂いを嗅ぐことができるうえ、プーさんさながらに食いしん坊だ。十分に気を付けたい。
バンクーバーとホワイトホース間の国内線
ホワイトホース往復の国内線が取れなかったらどうしようかと危惧していたが、櫛田さん曰く、ホワイトホースとの往復便は、何か大きなイベントでもない限り満席になることはないとのことだった。加えてAir Northだと航空券が安く買えるという耳より情報も教えていただいた。
2024年4月現在の情報にはなるが、Air Northのホームページ(👉Air North)から「Travel Offers」のメニューへ進むとOther Offersのカテゴリーに「Connector Fares」という項目がある。このConnector Faresは、国際便または国内便との乗継便として予約する場合に、特別価格が適用されるというもの。例えば60日以上前の予約であれば片道99カナダドルで購入可能で、30日前、10日前と段階的に価格が設定されている。
予約には簡単な条件を満たしたうえで、Eメールと国際電話の両方で予約窓口とやり取りする必要があるが、通常の格安航空券の半額程で購入できる。いつまでこのオファーが続くのかは不明だが、今後ホワイトホースを目指す方はチェックしてみる価値はあると思う。予約自体は難しいことではないが、慣れない人のために具体的な予約方法について、実体験を交えてスピンオフ記事(👉Ep.2.5 補足編)にまとめておいた。
最後に(その他の注意点)
何年もの間、コロナ禍によって海外渡航の足が鈍ったことで、パスポート期限が切れているメンバーがいるのではないかと思ったのだが、やはり1人のパスポート期限が切れていた。eTA(電子渡航認証)も忘れてはならない。今回の遠征は手探りで進めているため、こういう些末なことは忘れがちだが早めに対応しておきたい。eTA申請時はカナダ政府サイトで申請することを強くお勧めする。その理由については国内線予約で触れたスピンオフ記事(👉Ep.2.5 補足編)に記載してある。
今回の準備にはすでに失敗談もある。ユーコン川では近距離型のトランシーバーを使ってコミュニケーションを取ろうかと思い、良さそうな特定小電力トランシーバーを2台購入しておいたのだが、念のため確認したらカナダの法律では日本製のトランシーバーが使えないことが分かった。当たり前と言えば当たり前の話だ。日本の無線免許と複数台の無線機を持っているくせに、「特定省電力」だから大丈夫だろうと安易に考えてしまった。凡ミスである。結局、カナダで適当なライセンス不要のトランシーバーを買うことになりそうだが、幸い5月にカナダの知人が来日するので、彼の自宅宛にアマゾン(カナダ)から発送して持ってきてもらおうと思う。
次の「特集・ユーコン川カヌー」の記事は「修行編👇」。野尻湖で基礎練習をした翌日に犀川で川下りを行うという2日間の修行の様子をお届けする。
それでは、See you in the next article!
★がくんち – Gaku’s Base★
お気軽にコメントください