少し怖いけどいい話
こんにちは、がくんちのガクです。
今回の記事は、2016年に実際に山で経験した話です。山で不思議体験をするのはよく聞く話ですが、本人の解釈しだいで良いものにも悪いものにもなりますよね。
初子連れ登山の計画
初めて娘を連れて登山をしたのは、2016年の秋のこと。娘がちょうど2歳になる前でした。気の早い私は子供が生まれて1年もしないうちに、きっと山にも登るからという理由で、子供を背負えるモンベルのベビーキャリアを購入し、いつ使うかも分からないまま部屋の片隅に置いてありました。実際に登山に使う前に、一度だけ離れた駐車場からカフェへ移動する際に使ってみた程度はしてみました。
そうこうするうちに、そろそろ簡単な山なら行けそうだと思える時期が来ました。その時に計画したのは、大菩薩嶺のロッジ長兵衛まで車で行き、そこから大菩薩峠を経て大菩薩嶺山頂を踏んだ後は、唐松尾根より下山してロッジに戻るというルートでした。しかも下山後はロッジのテント場で泊まるというのんびりした計画です。当日は私たち家族3人に友人1人を加えた計4名で、山岳用のテント一式と、たくさんの紙おむつを持って都内を出発し、午前の遅い時間にロッジの駐車場に入りました。
大菩薩嶺を登る
すぐに準備をして出発。娘が頭に被るのは登山用ではなく、電動アシストママチャリに乗せる時のヘルメットです。たまに休憩する際の娘は、登山道を少しだけ歩いてみながら、通り過ぎる人ににこやかに手を振るというマスコットキャラ(?)ぶりを発揮していました。
本人は覚えていないでしょうが、大菩薩峠を過ぎて稜線を歩く時、開けた景色について私が「どう、きれいでしょ?」と話しかけていた記憶があります。反応は無かった気がしますけどね。
峠から山頂までは1時間かからないくらいでしたが、この間に背中がずしりと重くなったと思っていたら、山頂に着く前から娘がぐっすり寝ていたようです。
山頂に着いても起きないし、起こす理由もないので、寝かしたままベビーキャリアを下ろして大人達は休憩です。
下山には唐松尾根を利用しましたが、意外に一歩づつの段差が大きくて、脚力にが無いと子供を担ぐのは難しいだろうなと考えながら歩いていたのを覚えています。そもそも脚力に自信の無い人は子供を背負って山に来ないでしょうけど。
登山慣れしていなさそうな若いカップル(山をやる人の服装ではない人たち)は、かなりもたもた下りていたので、山慣れしていない方は、ここの下りでは気を引き締める必要はあるかもしれません。
ロッジでテント泊
泊りなので意図的にのんびり下りてきたというのもあって、少し薄暗くなったくらいにロッジに戻り、さっとテントを張って夕食の準備をしました。そして、いつもの通りちびちび飲みながら歓談していました。娘は離乳食の完了期を過ぎたくらいでしたが、そのころ何を与えていたのかもあまり覚えていません。たぶん大人の食べるもののうち薄味なものを刻んで食べていたと思います。
テント場では、娘と外を歩いてヘッドランプを消して、その暗闇に娘が固まったりするのをちょっと面白がりつつ(もちろん手を握って「暗いでしょ?」と話しかけながらですよ)、またテントに戻って歓談という感じで時間が過ぎていきました。
何かが来た?
防寒にサルの着ぐるみを着た娘が我々に背を向けて、テントの一角に向かい一人でキャッキャと騒ぎ始めました。明らかに何もないテントの隅に向かってです。それがわりと長い時間(たしか30分以上)断続的に続きました。このように何もないところに向かって笑いかけたりするのは、幼児にはよく見られる行動です。こうした現象は、どこの家庭でも見られるもので、これを見ると「子供には大人に見えないものが見える」と言われていることに納得します。
テントにいた大人3人は、ちょっと怖いなと思いながらも、「何かいるの? 誰かいるの?」と面白半分に話かけます。娘は舌足らずな日本語で「うん、いるよ」と言います。そして、「イヨちゃんだよ」と明確に答えたのです。
妻と友人がそれで少し盛り上がっていたのですが、怖い話が苦手な私(祖父母が田舎の信心深い仏教徒だったので、霊とか何とかをネタにふざけるのは不謹慎だという感覚もあり)は、妻たちに話題を変えるように促しました。
しばらく時間が過ぎると娘がこちらに向き直ったので「まだいるの?」聞いてみました。「いなくなった・・・」と言うのを聞いて、なんとなくほっとしたのを覚えています。
(写真(下)にイヨちゃんが来ているらしい)
山では不思議な感覚を覚えることがたまにあります。例えば、ある日の下ノ廊下(黒部)の沢沿いでのこと、寒空の下で一晩中寝ていた私でしたが、すぐ脇のテントにいた仲間が「よくそんなところで寝ていられましたね。夜中にすごくざわついていませんでしたか?いっぱい集まっている感じしましたよ。」と真顔で言ったこともありました。「確かに見られている感覚があって、一回目を覚ましたんだよね」と会話したのを鮮明に覚えています。
話を大菩薩嶺に戻すと、アルコールと登山の疲れでぐっすり寝た翌朝、車で50分ほど離れた「ほったらかし温泉」を目指して運転を始めました。山を下る道すがら昨日のあれは何だったんだという話になり、名前を憶えていた私が「イヨちゃんはまだいる?」と娘に聞くと、なんとなく周りも見回しながら考え込むようにして「うぅん・・・いない」と答えました。今度こそ安心した大人達でした。
それは菩薩様だよ
私の山仲間の一人に、毎年のシーズン中には北アルプスの某山小屋の番頭をしている方がいて、その方とどこかの岩か沢を登って宴会している時に、大菩薩嶺でのイヨちゃんのことについて話しました。そうしたら「それは大菩薩嶺の菩薩様が、珍しく小さい子が来たものだから、姿を変えて遊びに来てくれたんだよ」と一言。なんと心の清い友人を持ったものだと感心しつつ、なるほど、そんな考え方もあるのだなと変に納得させられました。
それからというもの、娘が不思議な運の強さに恵まれる場面に出くわすと、「ご加護があったのかもしれない」と思ったり思わなかったり。良い思い出の一つです。
ちなみに登った当初は知らなかったのですが、大菩薩嶺のある部分は恐怖の心霊スポットとしても知られているようで、最初からその意識をしていたら、きっと良い思い出よりも恐怖体験として記憶に残ったのかもしれません。大切なのは「心の持ちよう」ですね。
ガク
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