【ユーコン川カヌー】本編① テスリン川の前半(1~2日目)

目次

ホワイトホース到着

本ブログ記事は以下の3本の動画に関連しています👇

ユーコン編 動画 Ep.1

ユーコン編 動画 Ep.2

ユーコン編 動画 Ep.3

ユーコン遠征の背景

ユーコン川下り遠征の4人(詳細プロフィールは過去記事へ👉こちら

ガク

やまとさん

みやちん

あっちゃん

最初にユーコン行きで盛り上がったのは5年以上前の話。当時は同じ山岳会に所属する先輩2人と当ブログの管理人ガクと山と旅のイラストレーターやまとさんの4人での計画だった。たしか言い出しっぺはやまとさんだったと思う。その時は目立った理由もなく、なんとなく話がまとまらずに空中分解してしまった。単に忙しかったからだろう。一度は約束したのにと心残りのまま随分と時間が流れてしまった。

ふとした思い付きで「ユーコンの話は忘れていない」という久しぶりの連絡をやまとさんに入れたところ、次のシーズンには一人ででも行くつもりだと言う。「じゃあ行こう」と、衝動的な返事を返しつつ、共通の友人であるみやちんあっちゃんに軽いノリで「ユーコン行く?」と聞いたところ「行く!」と、これまた衝動的とも取れる軽い返事が返ってきた。こんな身軽な奴らがよくいたもんだと感心しつつ、この年の夏は大和さんが小屋番を務める、北アルプスの薬師沢小屋まで計画を決めに行くことになった。

実際に薬師沢小屋には娘を連れての4人で遊びに行き、晩酌を交わしながらそれぞれの役割を決定。半年ほどの計画・準備期間を経てとうとうユーコンへの旅立ちの日がやってきたのである。
ユーコン遠征の計画については、過去のブログ記事(計画編と準備編)に詳しい情報を紹介しています👇

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ホワイトホースに到着

羽田空港で合流して一杯ひっかけたガク、みやちん、あっちゃんの3人は、飛行機の中はもちろんのこと、バンクーバーでも一杯ひっかけてからホワイトホース行きの国内線を乗継ぎ、それぞれの飛行機で連続する機内食サービスによってブロイラーチキンになりながら、ホワイトホースの地に降り立った。白夜のために日中のように明るいホワイトホースで、Klondike Canoeing Rentalsのオーナー櫛田さん👉リンク)と、先行してホワイトホース入りしてたやまとさんが出迎えてくれた。

地図の右端のホテルから左端のJackpotまで徒歩で約15~20分

1週間ほど前からホワイトホース入りしてソロトレッキングに出かけていたやまとさんは、仲間に合流できたことを素直に喜び、遅くまで営業していたリカーショップでビールとワインを買って部屋飲みで盛り上がる。だいたいの食材調達はやまとさんがしてくれていたが、日本とは食事事情が違うだけに色々とお困りだったらしく、翌朝に皆で足りない食材を買いにスーパーへ出かけた。その後、フィッシングライセンスを買いに取り扱いがあるという店へ向かう。

ところが、最近になってフィッシングライセンスを扱うシステムが刷新されたようで、お店の初老女性は外国人に対する販売の方法が分からないと言い始めた(システムに住所や電話番号などを入力するのにエラーメッセージが出て、どうしてよいか分からなかったらしい)。役所に電話をして聞いてくれたりするのだが、そもそもキーボードの扱いもおぼつかないご様子で、役所で直接買ったほうがよいという話になった。

時間通りに昼過ぎに迎えに来てくれた櫛田さんにお願いして役所へ向かってもらい、無事にライセンスが購入できて一件落着。しかし、フィッシングライセンスのすったもんだのおかげで昼食が取れず、朝に買ったクッキーのみで遅くまで漕ぎ続ける羽目になるとは、この時は知る由もなかったのである。

テスリン川初日はブラック残業

テスリン川の1日目

Johnson’s Crossingを出発

ホワイトホースから車で2時間ほどの距離にあるJohson’s Crossing。ここからテスリン川とユーコン川をCarmacksまで下る約370kmの旅が始まる。話は変わるが、やまとさんのトレッキング中はほとんど蚊を見かけなかったとのことで、蚊の時期が始まっていないのではないかと虫よけを用意しなかったのだが、この判断は微妙だったかもしれないという周囲の意見もあり、慌ててJohnson’s Crossingの売店で虫よけを購入。
日本製の虫よけでは全く効かないようで、ディードという成分が30%も入ったような強烈な虫よけが必要になる。結果的に我々の旅では蚊の被害はほとんど無かったのだが、それは結果論であって、もう少し温かくなっていたら、おそらく蚊の猛攻撃にあっていたことだろう。
本題に戻すと、テスリン川はテスリン湖から流れ出し約200kmでユーコン川と合流するが、漕ぎ始めのJohnson’s Crossingは湖の最下部近くにあるため、ほとんど流れが無い状態にあり、最初の2日程度は流れの極めて弱い中を下ることになる。櫛田さんによると、風が強い日に川旅に出発したお客さんがこの場を逆走してしまい、テスリン湖から衛星電話を使ってSOSをしてきたことがあるらしい。風に煽られているのを流れの方向と勘違いし、黙々と遡上してしまったそうだ。たしかにこの場所は流れが無いため、漕いでも漕いでも進んだ実感がない。風で煽られたら流れと勘違いするというのはわりと納得がいく。

湖のように穏やかなJohnson’s Crossing

カヌーは日本で練習した時よりも大型のタイプで、少しだけ安定性が高い気がしたが、それが荷物が載せたせいなのかは判断がつかなかった。どちらにせよバランスを崩せば簡単に(ちん(転覆))することは実体験からよく分かってる。初日のパドリングのことはよく覚えていないが、「絶対に沈はしないぞ」という意気込みだけは強く持っていたのを覚えている。そもそも日本を発つ直前の親戚の病や、人食いバクテリアによる母の突然の他界などと色々ありすぎて私の頭は完全にバグっていたため、黙々と漕いでいる間のことはほとんど記憶しておらず、残した動画だけが頼りである。

この日の計画は25kmほど進む(1日50km計算の半日分)というものだったが、結果的に33キロほど漕ぐ羽目になった。そもそも静水を半日で25km漕ぐというのも、それなりに体力勝負であるにも関わらずだ。

テスリン川の美しい自然

キャンプ地を求めて

リバーマップ(川地図)に記されたキャンプ地候補には、Potential Camp / Fair Camp / Good Camp / Excellent Campといったランク分けがあり、混雑する時期であれば良いキャンプ地から埋まっていく。我々はシーズンが始まったばかりの閑散期だったため、キャンプ場に困ることはない。しかし、初めて下るテスリン川&ユーコン川においては、見ず知らずのキャンプ地マイスターが格付けしたGood Campの尺度など分からない。ましてや我々は山屋・沢屋という野人であり、頭からツェルトをかぶって岩の上で寝たことも1度や2度ではないため感覚が麻痺している

リバーマップの縮尺や形状の表記などにも不慣れなため、キャンプ地の記載がある手前から慎重に探っていくのだが、初めのいくつかはどこにあるのか見当もつかなかった。「もうキャンプ地じゃなくてもいいんじゃない?」という気になった我々は、広そうな河原を見つけて泊まることにした。湿地帯でなければ大丈夫だろう。遠くから見て良さそうだと思った河原へと元気よく漕いだのだが、カヌーを接岸して降り立った場所には無数の動物の足跡が散らばっていた。

成人男性の手の平ほどのグレーウルフの足跡

水鳥やキツネのような小さな足跡から始まり、ヘラジカ(Moose)グレーウルフ(Grey Wolf)といった巨大な足跡も点在している。やまとさん曰く熊の足跡もあったそうだ。どうやらここは動物達の水場になっているようで、さすがにこんな野生動物の足跡展示会場に堂々とテントを張る勇気はなかった。そして再びカヌーを漕ぎだした。

Good Campかと思ったら

時刻は夜9時をとうに回っている。白夜のせいで日本(夏)の夕方4時くらいの強い西日が差しているが、夕方4時に漕ぎ始めて、5時間以上漕いできたのだから、これ以上は漕ぎたくない気持ちでいっぱいである。後で聞いたのだが、この時にやまとさんは「このストイックな人たちと8日間も付き合っていけないんじゃないか…」と思っていたそうだ。

西日に向かって漕いでいくため正面からの強烈な光で目がやられそうだ。水面の反射と極度の疲労と空腹(おやつしか食べていない)が相まって、まっすぐ天国にでも向かっているような気分になってしまう。とりあえずリバーマップにある次のGood Campの表記までは1時間程度だという目標のみを頼りに流れの無いテスリン川をひたすら漕ぐ。

夜11時を回って太陽が姿を隠し気温が急激に下がり始めた頃に、Good Campだと思われる地点に到着した。手前から慎重に探ってこれ以上ないと思える場所だったため、これがGood Campだと確信した。櫛田さんに、「今日はブッシュでのキャンプになると思いますよ」と言われていたところを、「ちゃんとGood Campに泊まれたもんね」と誇らしげに胸を張りたい子供のような気分だ。ここにファイヤーピット(焚火の炉)を作ることにし、熊対策に数十メートル離れた場所にテントを張った。実はGood Campでは無かったという落ちなのだが

ようやく焚火を囲んで乾杯をしたのは凍てつくような寒さの中。いつもは一番遅くまで飲んだくれているガクに体力の限界が訪れたため最初に沈没。ありがたいことに、動物と山火事対策のための後片付けは、残ったメンバーが対応してくれた。テントは男性棟と女性棟で二張りしてあり、フラフラしながらブッシュを歩いたガクは、男性棟に入ると厳冬期用のシュラフに両足を突っ込んでチャックを閉めている途中で気絶した。

熊の恐怖に怯えながら焼いたステーキ

一度寝ると滅多なことでは起きないガクは全く気が付かなかったのだが、やまとさん腕の痛みで夜中に何度も目を覚ましてシクシク泣いていたそうだ。夜中にそんな声を聞いてしまったら、ユーコンに現れる「すすり泣く女の霊」の存在を信じてしまうところだった。朝方にその事実を知ったあっちゃんの爆笑によって女の霊はすっかり除霊されてしまい、カヌーに鎮座する地蔵菩薩となったそうな(「今日はお地蔵さんになる」という本人の宣言どおり)。

テスリン川2日目に恐怖体験

テスリン川の2日目

Good Campの真実

朝になって、熊の痕跡がないか緊張しながらテントを出る。昨晩の焚火跡に向かう途中のカヌーを確認したところ、船底に少したまっていた水が凍っていた。昨晩はそれほど冷え込んだというわけだ。ちなみに、ここまで冷えたのはこの夜だけで、この後は夏を目前にした毎日の徐々な気温上昇を感じたが、全体的に涼しかったおかげで蚊が少なくて良かった。6月の気温上昇が蚊の大発生のタイミングでもあるようなので、その点についてはラッキーだ。

テント脇に現れたリス

辛ラーメンに野菜炒めと目玉焼きを添えた朝食を取り、カヌーに乗り込んで2日目のパドリングが始まる。念のため岸沿いを観察しながら進んだのだが、驚いたことに出発から25メートルほど先本当のGood Campが存在していたのだ。岸の上がり口には道が付いており、石で組んだ立派なファイヤーピットが見える。「なんてこった!」と思ったが後の祭りである。少なくともGood Campというのは本当にGoodなんだという格付け基準への理解は深まったので、今後は見つけやすくなるだろう。

テスリン川の流れ

前日のブラック残業のせいで重たい体だったが、テスリン川の緩急のある流れを進むうちに動きも良くなってきた。途中、山火事で焼けたフィールドの一角を見物しながら進む。この地は乾燥していて燃えやすいため、おそらく自然発火による山火事が頻繁に起こっているのだろう。バウに鎮座していた地蔵菩薩の腕も軽快に動き始めた頃、リバーマップ上にFish Campと書かれたいかにも釣りをしてくださいとでも言っているような場所に到着したので竿の準備を始める。ルアーやフライ、テンカラなど、各自が自由にタックルを持参していた。

山火事の跡

しばらくルアーを投げて思ったのは、テスリン川の流れが大きすぎて魚の居着いている様子がまったく想像できないということ。ポイントが絞れないので、どこにどうアプローチしていいものやら分からない。そう思った私はさっさと竿をたたんで休憩することにした。他の3人もすぐに諦めたようで、自然にカヌーの付近に集まってランチタイムが始まる。このランチブレイク付近からはテスリン川の流れも結構速くなっており、しゃかりきになって漕がなくても進んでいくのが楽しかった。

水流の罠

途中で通り過ぎるGood Campの位置などを確認しつつキャンプ地に対する選球眼を養いながら進むのだが、地図上にExcellent Campなどと表記されていると見てみたくなるのが心情で、皆で近付いてみることになった。このキャンプ地はわりと流れの強い支流の流れ込みと本流との出合いにあるポイントで、正直、どうやってアプローチすれば接岸できるのかわからずじまいだったのだが、そもそも不慣れなパドリングで近寄るべき場所ではなかった

というのもこの辺りは流れが複雑で、なんとなく近寄ってみた場所がちょうど渦を巻く状況だったため、見事にトラップにはまって危うく沈するところだった。渦だけならまだしも、ご丁寧に岸から倒れた木が伸びていて、流れに巻かれた我々を薙ぎ払おうとでもしているようだったためかなり肝を冷やした。正直、何事もなかったのは運が良かったと思っている。これで強風でも吹いていたら完全にアウトだっただろう。(詳しい様子はエピソード3の動画へ

この後は我々の無事を祝うようにヘラジカの親子が姿を見せてくれた。ちなみに今回の川下りでは動物を見る機会がけっこう少なく、後で現地ガイドと会話した時も、我々の動物との遭遇率の低さに驚いていた。気温が低かったせいかもしれない。

Good Campで和風な宴

この日は、丸一日養ってきた選球眼のおかげでGood Campを見落とさずに上陸できた。キャンプ地とはこんなに素晴らしい場所なのかと驚いてしまうほどで、料金も払わずに泊まっていいのかと、日本のキャンプ事情に慣れすぎた我々は一瞬躊躇してしまうほどだった。木の上に取り付けられたワイヤーにはフックが取り付けられていて、熊対策に残った食品などを高い位置に吊っておくようにもなっており、人が多く入っている場所なのが伺える。

まずは宴会に使うファイヤーピットから50メートルほど離れた場所にテントを張り、地べた族の必須アイテムであるブルーシートを広げる。現時点でアンバサダーを務めさせていただいている「やすまるだし」(👉リンク)と「伊予のみそ」(👉リンク)を日本から持ってきていたので、これをベースに料理をしようということになり、やまとさんが用意してくれた食材を眺める。ぱっと頭に浮かんだのが、キュウリの味噌マヨネーズ、ベーコンとセロリの麦みそ汁、親子丼の三品だった。

旅の共にだしパックと味噌

この時の味噌汁には全員が驚いたベーコンとセロリの味噌汁というのは存在するが麦みそで作るのは初めて。伊予のみそ以外の麦みそは試していないが、おそらく大豆の味噌汁よりも良い結果になるのではないかと想像する。ちなみに、この時の味噌汁を帰国後に自宅で作ったところ、セロリなど絶対に食べないだろうと思っていた小学生の娘がおかわりまでして食べていた(ただし娘の時にはセロリは早い段階から軟らかくなるまで煮ている)。試しに大豆の味噌でも同じように作ってみたが、この時はセロリが不味いと言って食べてくれなかった。
だしパックの詳細については過去のだしパック比較記事をどうぞ👇

がくんちブログ
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テスリン川は後半へ

この記事ではテスリン川の前半部分(1~2日目)について紹介したが、この頃はまさに序盤戦といった感じで様々なことに不慣れだったことを思い出す。次回記事ではテスリン川の後半部分(3~4日)について紹介するが、この頃になるとテスリン川を大いに楽しんでいる様子を紹介できると思う。そして5日目以降はユーコン川へと続いていく。

次回記事(本編②)はこちら(2024年12月公開)👇

それでは次回記事で会いましょう。

ガク

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ユーコン編 動画 Ep.1

ユーコン編 動画 Ep.2

ユーコン編 動画 Ep.3

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